第一種電気工事士は、高圧(最大電力500kW未満)の自家用電気工作物まで扱える上位資格です。本記事では、試験概要・直近10年の合格率・公式9分野の出題範囲・学習時間の目安・免状交付の3年実務経験要件まで、独学で合格を目指す方向けに体系的に解説します。資格クエストの過去問DB(650問・2015〜2024年)の集計データも交えて、効率的な攻略の道筋を示します。
第一種電気工事士とは——取得メリットと位置付け
第一種電気工事士は、電気工事士法に基づく業務独占資格です。第二種が一般用電気工作物(住宅・小規模店舗の600V以下)に限定されるのに対し、第一種は一般用に加えて自家用電気工作物(最大電力500kW未満の需要設備)の電気工事まで担当できます。工場・ビル・大型店舗のキュービクル受電(高圧6,600V)は、第一種でなければ工事できません。
取得難易度
普通〜やや難
学科約53%・技能約63%(10年平均)
独学勉強時間
60〜250時間
第二種既取得者は短縮可(目安)
試験回数
年2回
2024年度から上期・下期の2回化
第二種との違い(簡略比較)
| 項目 | 第二種 | 第一種 |
|---|---|---|
| 工事範囲 | 一般用(600V以下) | 一般用+自家用(500kW未満) |
| 学科分野数 | 7分野 | 9分野(自家用検査・電気応用・発電送変電を追加) |
| 免状交付 | 合格後すぐ申請可 | 実務経験3年以上が必要 |
| 定期講習 | なし | 5年に1度受講義務 |
詳細な違いと「どちらを先に取るべきか」の判断基準は第一種と第二種電気工事士の違いを徹底比較で解説しています。
取得メリット3点
- 年収アップ——第二種より高度な工事が可能なため、電気工事会社・ビル管理会社で資格手当や昇給の対象になりやすい
- 転職力の向上——大型施設のキュービクル工事・更新工事は第一種が必須で、有資格者は慢性的に不足している
- 上位資格への踏み台——電気主任技術者(電験三種)への学習にも基礎が活きる。電気系資格の縦串ステップとして最適
試験概要
第一種電気工事士試験は一般財団法人 電気技術者試験センターが主管します。令和6年度(2024年)から年2回実施になり、学科試験はCBT方式(パソコン受験)と筆記方式(マークシート)から選択できます。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 受験資格 | なし(年齢・学歴・実務経験不問) |
| 試験頻度 | 年2回(上期: 学科CBT 4月頃/技能 7月頃、下期: 学科CBT・筆記 10月頃/技能 12月頃) |
| 学科試験 | 50問・四肢択一・60点(30問)以上で合格・試験時間140分 |
| 学科形式 | CBT方式または筆記方式から選択(令和5年度から) |
| 技能試験 | 候補問題10問が事前公表、当日その中から1問・試験時間60分 |
出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「第一種電気工事士試験」(確認日: 2026年4月27日)
合格率(直近10年)——学科約53%・技能約63%
直近10年(平成27〜令和6年度)の平均合格率は、学科で約53%、技能で約63%です。第二種(学科約58〜59%・技能約70%)と比べると数ポイント低く、特に技能試験は高圧機器の知識を要するため、第二種から続けて挑戦する場合は技能対策に時間を確保したいところです。
| 年度 | 学科合格率 | 技能合格率 |
|---|---|---|
| 令和元年度(2019) | 54.1% | 64.7% |
| 令和2年度(2020) | 52.0% | 64.1% |
| 令和3年度(2021) | 53.5% | 67.0% |
| 令和4年度(2022) | 58.2% | 62.7% |
| 令和5年度(2023) | 61.6% | 60.6% |
| 令和6年度(2024) | 56.7% | 59.9% |
| 10年平均(H27〜R6) | 約53% | 約63% |
出典:電気技術者試験センター「第一種電気工事士試験の試験結果と推移」(確認日: 2026年4月27日)
年度別の詳細データと難易度推移、第二種との比較分析は第一種電気工事士の合格率・難易度を徹底解説で確認できます。
学科試験の出題範囲(公式9分野)
学科試験は電気工事士法施行規則・告示で定められた9分野から出題されます。第二種の7分野に加え、「自家用電気工作物の検査方法」「電気応用」「発電・送電・変電施設」の3分野が独自に追加されています。
| 分野 | DB出題数 | 比率 |
|---|---|---|
| 配線図★最重要 | 140問 | 21.5% |
| 電気機器、蓄電池、配線器具、材料・工具、受電設備 | 127問 | 19.5% |
| 電気工事の施工方法 | 76問 | 11.7% |
| 電気に関する基礎理論 | 65問 | 10.0% |
| 発電施設、送電施設、変電施設の構造・特性 | 52問 | 8.0% |
| 配電理論及び配線設計 | 51問 | 7.8% |
| 自家用電気工作物の検査方法第一種独自 | 49問 | 7.5% |
| 保安に関する法令 | 47問 | 7.2% |
| 電気応用第一種独自 | 43問 | 6.6% |
| 合計 | 650問 | 100% |
資格クエストDB(2015〜2024年・全13セッション・650問)の集計値。年度・回ごとに数問の変動あり。
第二種にない3分野が合格の分かれ目
「自家用電気工作物の検査方法」「電気応用」「発電・送電・変電施設」の3分野で約22%(合計144問)を占めます。第二種の知識だけでは太刀打ちできない領域なので、ここを集中的に強化することが第一種攻略の鍵です。自家用検査の頻出トピックは自家用電気工作物の検査方法 完全攻略で詳しく解説しています。
学習時間と進め方
第一種電気工事士の学習時間は公的統計が存在しないため、複数の予備校・受験対策サイトの目安を参考にしています。あくまで目安として、自分の予備知識と照らし合わせて調整してください。
電気予備知識ゼロから
150〜250時間程度
第二種未取得・電気の知識ほぼゼロから挑む場合の目安。複数の受験対策サイトでの記述による。
第二種既取得者
60〜100時間程度
第二種の知識を活用できるため、自家用検査・電気応用・発電送変電の3分野中心の学習で済む。
学習の基本方針は次の通りです。
- 第一週〜:参考書1周+全体像の把握。第二種既取得者は新規3分野(自家用検査・電気応用・発電送変電)から始める
- 中盤:分野別過去問。資格クエストDB650問を分野別に絞り込んで集中演習
- 終盤:年度別通し演習+弱点補強。140分の本番形式で時間配分を体に覚えさせる
月単位の詳細スケジュール(学科3ヶ月・技能2ヶ月)は第一種電気工事士の独学スケジュールで具体例を示しています。
合格までの流れ(学科 → 技能 → 免状交付)
学科試験に合格(50問中30問以上)
CBTか筆記を選択。学科合格後は同年度の技能試験に進める。学科のみ合格した場合、次回の学科試験は免除(学科免除制度)。
技能試験に合格(候補問題10問から1問)
試験時間60分で配線作業を完成させる。第二種より高圧機器(VT・CT・OCR等)が登場するため、複線図と作業順序の習熟が必須。
実務経験3年を満たして免状交付申請
令和3年(2021年)4月の電気工事士法施行規則改正により、学歴を問わず一律3年以上の実務経験で免状交付申請が可能になりました(改正前は大学・高専 電気工学系卒は3年、それ以外は5年)。試験合格前の実務経験も対象です。
免状取得後の義務
第一種電気工事士免状の保持者には、5年に1度の定期講習受講義務(電気工事士法第4条の3)があります。第二種にはない義務なので、免状取得後も継続的なフォローが必要です。
実務経験の対象工事・対象外工事の判定、申請書類の準備手順は第一種電気工事士免状の取得要件と実務経験で詳しく解説しています。
よくあるつまずきポイント
① 自家用検査の高圧機器に慣れない
絶縁抵抗測定(高圧)・接地抵抗測定・継電器試験(OCR/GR/DGR)・絶縁耐力試験など、第二種で扱わない高圧機器の試験方法が大量に出題されます。キュービクルの実機を見たことがない受験者は、写真と数値(絶縁抵抗の規定値、耐圧試験電圧など)をセットで覚えることが重要です。
② 電気応用の照明・電熱・電動力で取りこぼす
照明(光束・照度・効率)・電熱(ジュール熱・電力量)・電動力(誘導電動機の特性)は、計算と暗記が混在するため対策が後回しになりがち。配点比率は約6.6%ですが、得点しやすい領域なので捨てるのは惜しい分野です。
③ 計算問題の量が第二種より多い
基礎理論(10.0%)+配電理論(7.8%)+電気応用の計算部分を合わせると、計算系で2割程度を占めます。三相交流・力率改善・電圧降下・短絡電流といった頻出パターンを早期に固めておかないと、本番で時間切れになるリスクがあります。
④ 配線図の読み方が高圧仕様で複雑化
第一種の配線図は受電設備(VCB・LBS・PF・VT・CT等)の単線結線図が中心で、第二種の住宅配線図とは様相が異なります。図記号と機器の役割をセットで覚えるアプローチが効果的です。
まとめ
第一種電気工事士は、第二種の延長線にありながら高圧領域までカバーする本格的な業務独占資格です。攻略のポイントは次の4点に集約できます。
- 第二種にない3分野(自家用検査・電気応用・発電送変電)を優先——合計約22%を占め、合否を分ける領域
- 計算問題は早期に着手——基礎理論+配電理論+電気応用の計算で約2割。捨てると合格ラインが遠くなる
- 2024年度から年2回化を活用——上期で挑戦して、不合格でも下期に再受験できる戦略が組める
- 免状交付には実務経験3年が必要——令和3年改正で一律3年に統一。試験合格と実務経験を並行して進めるのが最短
資格クエストでは、2015〜2024年の全13セッション・650問を分野別・年度別に絞り込んで演習できます。第二種既取得者は「自家用検査」「電気応用」「発電送変電」の3分野から、ゼロからの方は「配線図」「電気機器・受電設備」から手を付けるのが効率的です。