第一種電気工事士の合格率は「半分くらい」と語られがちですが、これは学科と技能を混同した数値です。本記事では電気技術者試験センターが公表する過去10年の公式データを学科・技能別に整理し、第二種・電験三種との比較や、資格クエストの650問DBから集計した分野別出題比率と併せて、第一種ならではの難しさを客観的に解説します。
第一種電気工事士の合格率(公式データ)
まず結論から。第一種電気工事士の合格率は学科で約57%、技能で約60%です(令和6年度・電気技術者試験センター発表)。第二種と異なり学科と技能で合格率の差がほとんどないのが特徴で、技能まで含めて「学科で広い範囲を取りこぼさない」「技能で複雑な高圧配線を時間内に組み上げる」両方の準備が必要です。
| 年度 | 学科受験者 | 学科合格者 | 学科合格率 | 技能受験者 | 技能合格者 | 技能合格率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 令和7年度 | 36,154 | 20,735 | 57.3% | 28,403 | 16,509 | 58.1% |
| 令和6年度 ★ | 35,320 | 20,030 | 56.7% | 28,372 | 17,004 | 59.9% |
| 令和5年度 | 33,035 | 20,361 | 61.6% | 26,143 | 15,834 | 60.6% |
| 令和4年度 | 37,247 | 21,686 | 58.2% | 26,578 | 16,672 | 62.7% |
| 令和3年度 | 40,244 | 21,542 | 53.5% | 25,751 | 17,260 | 67.0% |
| 令和2年度 | 30,520 | 15,876 | 52.0% | 21,162 | 13,558 | 64.1% |
| 令和元年度 | 37,610 | 20,350 | 54.1% | 23,816 | 15,410 | 64.7% |
| 平成30年度 | 36,048 | 14,598 | 40.5% | 19,815 | 12,434 | 62.8% |
| 平成29年度 | 38,427 | 18,076 | 47.0% | 24,188 | 15,368 | 63.6% |
| 平成28年度 | 39,013 | 19,627 | 50.3% | 23,677 | 14,602 | 61.7% |
| 平成27年度 | 37,808 | 16,153 | 42.7% | 21,739 | 15,419 | 70.9% |
出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「第一種電気工事士試験の試験結果と推移」(確認日: 2026年4月27日)
10年間のサマリー(平成27〜令和6年度)
- 学科合格率の10年平均:約53%
- 技能合格率の10年平均:約63%
- 令和6年度から年2回開催に変更(学科CBT・筆記併用)。受験機会が拡大した一方、技能合格率は近年やや低下傾向
第二種・電験三種との難易度比較
「学科57%は難しいのか、易しいのか」——他の電気系資格と並べると、第一種は電気系資格の中位ポジションに位置することがわかります。第二種より一段難しく、電験三種とは桁違いの差があります。
| 資格 | 学科合格率 | 技能合格率 | 難易度 |
|---|---|---|---|
| 第二種電気工事士 | 58.1% | 70.2% | 易〜普通 |
| 第一種電気工事士 ← ここ | 56.7% | 59.9% | 普通 |
| 電験三種(第三種電気主任技術者) | 約16〜19% | — | 難 |
出典(第二種):電気技術者試験センター「第二種電気工事士試験結果」。出典(電験三種):同センター「電験三種試験結果」(いずれも令和6年度実績、確認日: 2026年4月27日)
第一種は第二種の上位互換ではなく「自家用電気工作物(最大電力500kW未満)まで工事可能」になる別ライセンスです。学科合格率の差は1.4ポイント程度と小さく見えますが、後述するとおり試験範囲が7分野→9分野に拡大しているため、同じ点数を取るための学習コストは大きく違います。電験三種に進む前のステップとして第一種を取得するキャリアパスも一般的です。
学科合格率53%でも「難しい」と言われる理由
「半分以上が受かる試験」と聞くと簡単そうに思えますが、第二種感覚で挑むとつまずく要因が複数あります。
① 試験範囲が9分野に拡大
第二種の7分野(基礎理論・配電理論・機器/材料・施工方法・検査方法・法令・配線図)に加え、第一種では発電・送電・変電施設/自家用電気工作物の検査方法/電気応用の3分野が追加されます。出題範囲の体感ボリュームは1.5倍近く広がります。
② 自家用検査・電気応用が第二種にない新規領域
キュービクル、絶縁耐力試験、過電流継電器(OCR)・地絡継電器(GR)の整定など、第二種では一切問われない高圧設備の知識が必要です。受電設備の単線結線図を読めるようになるところからのスタートになります。
③ 計算問題の比率が約24%(基礎理論+配電理論+電気応用)
三相交流、力率改善、電気応用(電熱・照明計算)など、第二種より一段高い計算力が求められます。50問中12〜13問が計算系で、ここを丸ごと捨てると合格ライン60点に届きません。
④ 配線図が高圧受電設備中心
第二種の配線図は住宅の単線図中心ですが、第一種は高圧受電設備の単線結線図が頻出。VCB・LBS・PAS・DGRなどの図記号と結線パターンを覚える必要があります。
分野別の出題数(資格クエストDB・2015〜2024年・全13セッション)
計650問 / 2015〜2024年の全13セッション
学科で落ちる人の典型パターン(3つ)
学科合格率53%ということは、受験者の約半数が不合格になっています。落ちる人には共通のパターンがあります。
- 1
第二種感覚で挑む(範囲が広いことを軽視)
「第二種に受かったから第一種も同じ感覚で」と過去問を3年分くらいで止めてしまうケース。9分野に広がった範囲を取りこぼし、特に発電・送配電・電気応用で失点します。第二種の延長線ではなく別試験として準備する姿勢が必要です。
- 2
自家用検査を捨てる(49問・7.5%)
絶縁耐力試験・継電器試験・接地抵抗測定など、現場経験がない受験者には馴染みがない範囲のため敬遠されがち。しかし第一種の独自分野として確実に毎回出題されるため、捨てると合格ラインに届きにくくなります。
- 3
計算を後回しにする
基礎理論+配電理論+電気応用で約24%(12〜13問)。三相交流や力率改善は理解に時間がかかるため後回しにしがちですが、直前に詰め込んでも公式が定着せず本番で時間切れになります。早期から計算問題用の時間を確保するのが鉄則です。
合格するための3つの条件
過去問10年分を演習する
第一種は第二種以上に過去問の的中率が高い試験です。資格クエストには2015〜2024年の全13セッション・650問が収録されており、年度別・分野別に絞って演習できます。配線図(140問)と機器・受電設備(127問)の2分野だけで全体の41%を占めるため、ここを反復するだけでも合格ラインが見えてきます。
第一種独自分野(自家用検査・電気応用・発電送配電)を集中対策
第二種既取得者の場合、共通範囲(基礎理論・配電理論・施工・配線図・法令)はある程度通用しますが、追加の3分野(自家用検査49問・電気応用43問・発電送配電52問=合計144問・22.1%)は第二種にない新規領域です。ここを最初に集中して潰すのが効率的です。
法令の暗記は中盤から並行
電気事業法・電気工事士法・電気設備技術基準・電気用品安全法を横断的に暗記する必要があります。47問・7.2%とボリュームは控えめですが、条文・数値・期間の暗記が中心で直前詰め込みでは抜けが出ます。学習中盤から1日10〜15分の継続暗記が効きます。
技能試験の特徴(合格率60%前後)
学科を突破した後は技能試験です。技能合格率は10年平均で約63%、近年は60%前後で推移しており、第二種の技能(70%超)より明確に低い水準です。
- 候補問題10問が事前公表される。当日その中から1問が出題されるため、10問すべて練習しておくことが基本です
- 試験時間は60分——第二種(40分)より長いものの、課題のボリュームも増えるためタイトであることに変わりはありません
- KIPケーブル・高圧機器・変圧器結線など、第二種にはなかった部材・配線が登場します。Y-Δ・V結線などの三相変圧器結線は複線図段階での誤りが致命傷になります
- 合否は「重大欠陥なし」が条件。リングスリーブのサイズミスや絶縁被覆のはみ出しに加え、第一種では変圧器の極性誤り・接地工事の種別誤りが頻出の不合格要因とされます
技能対策のポイント
複線図(単線図→複線図変換)を全候補問題で完璧に描けるようにしてから、実際の配線練習に入ること。第一種は変圧器結線のパターンが複雑なため、複線図を見ながら作業しないと60分以内に完成できません。
まとめ
第一種電気工事士の合格率は、学科約57%・技能約60%(令和6年度・電気技術者試験センター)。第二種より一段難しく、電験三種より大きく易しい電気系資格の中位ポジションです。
- 学科は9分野650問——第二種の延長感覚で挑むと取りこぼす
- 自家用検査・電気応用・発電送配電の3分野(合計22.1%)が第二種にない新規領域
- 計算問題は約24%——後回しにせず早期から手をつける
- 技能は候補問題10問が事前公表。複線図を全パターン描けるようにしてから配線練習へ
資格クエストで過去問演習を始めよう
2015〜2024年の全13セッション(650問)を収録。分野別・年度別に絞り込んで効率的に演習できます。第二種にない自家用検査・電気応用・発電送配電から始めると効果的です。
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