第二種電気工事士学科試験の「電気に関する基礎理論」131問(10.1%)と「配電理論及び配線設計」130問(10%)を合わせると261問・約20%が計算問題で占められる。多くの受験者がこの2分野を全捨てするが、捨てると残り40問で30問=75%の正答率が必要になり合格が一気に難しくなる。本記事は「計算が苦手でも5パターンだけ押さえて6〜7問確保する」戦略を、資格クエストDBの実データと一次ソースに基づいて解説する。
計算問題の配点構造——全捨ては合格への近道にならない
まず数字で現実を確認しましょう。資格クエストDBに収録された過去10年(2015〜2024年)26セッション・1,300問を集計すると、計算が必要な2分野の出題ボリュームは次のとおりです。
| 分野 | 10年間の問題数 | 割合 | 1回あたり |
|---|---|---|---|
| 電気に関する基礎理論 | 131問 | 10.1% | 約5問 |
| 配電理論及び配線設計 | 130問 | 10.0% | 約5問 |
| 2分野 合計 | 261問 | 20.1% | 約10問 |
出典:資格クエストDB(2015〜2024年の26セッション1,300問を集計)。2026年4月時点。出題範囲:一般財団法人 電気技術者試験センター「第二種電気工事士試験」(確認日: 2026年4月18日)
合格ラインは50問中30問正解(60点)。この10問を全て捨てると、残り40問で30問——つまり75%の正答率が必要になります。一般的に他分野でも満点は取れないため、計算問題を全捨てすると合格が極めて難しくなります。
逆算:5パターンで何問取れるか
後述する必修5パターンを習得すると、基礎理論・配電理論それぞれで3〜4問の正解が期待できます。合計6〜7問確保できれば、残り33問から23問(70%)でよい計算になり、合格圏が大幅に広がります。
必修5パターン——これだけ押さえれば6〜7問取れる
電気基礎理論・配電理論261問のうち、特定の計算パターンが繰り返し出題されます。出題頻度が高い5パターンに絞り込み、1問あたりの解法を定型化すれば、最小限の学習時間で最大の得点を確保できます。
| パターン | 主な公式 | 頻出問題タイプ | 出題分野 |
|---|---|---|---|
| 1. オームの法則 | V = IR | 回路図から電流・電圧・抵抗を求める | 基礎理論 |
| 2. 合成抵抗 | 直列: R₁+R₂ 並列: R₁R₂/(R₁+R₂) | 直列・並列回路の合成抵抗値を求める | 基礎理論 |
| 3. 電力計算 | P = VI = I²R = V²/R | ヒーター・電球の消費電力・電力量 | 基礎理論 |
| 4. 電圧降下 | 単相2線: 2IR 三相3線: √3·IR | 幹線の電圧降下量・電線の太さ選定 | 配電理論 |
| 5. 抵抗率 | R = ρL/A | 電線の長さ・断面積と抵抗の関係 | 基礎理論 |
交流回路・三相交流は後回しでよい
インピーダンス計算(Z=√(R²+X²))・力率・三相電力などは出題されますが、計算が複雑です。5パターンを固めた後で余裕があれば着手する程度で構いません。本記事の最後の章「捨てても良い問題の見分け方」で詳述します。
中学数学の復習——計算が苦手な人のための事前準備
電気理論の計算問題は、中学数学レベルの四則演算と分数計算があれば解けます。高校数学は不要です。以下の2点を確認しておきましょう。
分数の計算(並列抵抗・コンダクタンスで使う)
積÷和の公式: R = (R₁ × R₂) / (R₁ + R₂)
例: 6Ω と 3Ω の並列 → R = (6×3)/(6+3) = 18/9 = 2Ω
例: 4Ω と 4Ω の並列 → R = (4×4)/(4+4) = 16/8 = 2Ω
同じ値の抵抗を並列にすると、合成抵抗は「その値の半分」になる——この法則だけ覚えると暗算が速くなります。
√3(ルート3)の扱い方
√3 ≒ 1.73(試験では近似値 1.7 でも可)
用途: 三相3線式の電圧降下 e = √3 · I · R
例: I=10A, R=0.5Ω → e = 1.73 × 10 × 0.5 ≒ 8.65V
試験は四肢択一なので、選択肢の数値から「一番近い値」を選べば正解できます。厳密な計算にこだわらず、概算で選択肢を絞ることが時間短縮のコツです。
オームの法則の応用——ほぼ毎回出題される典型パターン
V = IR の変形は3通りあります。問題文に「電流を求めよ」「抵抗を求めよ」「電圧を求めよ」のどれが来ても、三角形の覚え方で即座に対応できます。
V = I × R (電圧を求める)
I = V / R (電流を求める)
R = V / I (抵抗を求める)
直列・並列混合回路の解法手順
試験では「抵抗2個の直列」「抵抗2個の並列」に加え、直列と並列が混在した回路が出題されます。解法の手順は固定です。
ステップ1:並列部分の合成抵抗を先に計算する
並列接続されている抵抗を「積÷和」で1つの等価抵抗に置き換える。
ステップ2:直列部分の合成抵抗を計算する
並列を置き換えた後、残りは直列の足し算になる。
ステップ3:V = IR に代入して答えを求める
全体の合成抵抗が出たら、電源電圧から電流を逆算(I = V/R)する。
例題:100V電源に3Ωと2Ω(並列)が直列接続
並列: R並 = (3×2)/(3+2) = 6/5 = 1.2Ω
(仮に直列でもう1つ4Ωがあれば)合計: 1.2 + 4 = 5.2Ω
電流: I = 100 / 5.2 ≒ 19.2A
電力計算の3つの公式の使い分け
電力(P)の公式は3種類あります。問題文に「電圧と電流が与えられている」「電流と抵抗が与えられている」「電圧と抵抗が与えられている」のどれかで使う式が決まります。
| 与えられている値 | 使う公式 | 典型的な問題 |
|---|---|---|
| 電圧V・電流I | P = V × I | 100V・10Aの負荷の消費電力 |
| 電流I・抵抗R | P = I² × R | 電熱線に5Aが流れるときの発熱量 |
| 電圧V・抵抗R | P = V² / R | 100V電源に10Ω抵抗をつないだ場合 |
電力量(Wh)は「P × 使用時間(h)」、熱量(J)は「P × 時間(秒)」で求めます。試験では「1kWのヒーターを3時間使ったときの電力量は?」という出題も頻出です。
単位変換に注意
kWとW、kΩとΩが混在する問題は単位を揃えてから計算します。特に1kW = 1,000W、1kΩ = 1,000Ωの変換を見落とすと桁が3つずれます。選択肢の数値が1,000倍ずれているように見えたら、単位変換ミスが原因です。
電圧降下の計算——配電理論の花形テーマ
配電理論130問の中で最も出題頻度が高いのが電圧降下の計算です。電線には抵抗があるため、電源から負荷まで電力を送ると途中で電圧が下がります。単相2線式と三相3線式で公式が異なるため、両方を覚えておく必要があります。
| 配電方式 | 電圧降下の公式 | 特徴・覚え方 |
|---|---|---|
| 単相2線式 | e = 2 × I × R | 往復2本分なので「2倍」 |
| 三相3線式 | e = √3 × I × R | 3本線の幾何学的関係で√3倍 |
ここで R は電線1本あたりの抵抗値(Ω)です。電線の長さが与えられている問題では、1m・1km・100mあたりの抵抗値(Ω/km等)を掛けて R を計算します。
例題:単相2線式・電流20A・片道100m・電線抵抗0.04Ω/m
R(片道)= 0.04 × 100 = 4Ω
e = 2 × 20 × 4 = 160V
幹線の電線太さの選定(配電理論のもう1つの頻出テーマ)
「許容電流以上の電線を選ぶ」問題も配電理論で頻出です。電流値から許容電流表を参照し、適切な太さのVVFケーブルを選ぶ問題は、表の読み方を覚えれば計算なしで答えられます。
VVFケーブルの許容電流(目安)
電流値を超えない最小の太さを選ぶのが基本。実際の試験では問題文中の条件で異なる場合もあります。
抵抗率と電線の抵抗——パターン5の完全攻略
「断面積が2倍になると抵抗は半分になる」「長さが2倍になると抵抗は2倍になる」——この2つの法則を理解すると、抵抗率の計算問題は数値を代入するだけで解けます。
R = ρ × L / A
R: 抵抗(Ω) ρ: 抵抗率(Ω·m)
L: 電線の長さ(m) A: 断面積(m²)
試験では「同じ材料で、長さが2倍・断面積が半分の電線の抵抗は元の何倍か」という形で出題されます。公式に当てはめると:
長さ2倍・断面積1/2の場合
R’ = ρ × (2L) / (A/2) = ρ × 4L / A = 4R
→ 元の4倍の抵抗値になる
計算の手順さえ覚えれば、具体的な抵抗率の数値(銅のρ = 1.7×10⁻⁸Ω·m等)を暗記しなくても比率の問題は解けます。
捨てても良い問題の見分け方
5パターンを固めた後、残った問題の中には難易度が高く、学習コストに対して得点効率が低いものがあります。試験時間は120分あるため、解けない問題に時間を使うより「後回し→他問題を確実に取る」戦略が有効です。
後回しにして良い問題タイプ
- ・交流回路のインピーダンス計算(Z=√(R²+X²) を使う問題)
- ・力率・有効電力・皮相電力の計算(P=VIcosθ)
- ・三相交流回路の線電流・線間電圧(√3が2回以上登場する問題)
- ・コイルとコンデンサのリアクタンス(XL=2πfL, XC=1/(2πfC))
確実に取りに行く問題タイプ
- ・直流回路のオームの法則(V=IR の直接適用)
- ・直列・並列合成抵抗(整数同士の計算)
- ・電熱器の消費電力・電力量(P=VI, W=Pt)
- ・電圧降下(公式に数値を代入するだけ)
- ・電線の抵抗と断面積・長さの比率問題
見分けるシンプルな基準
問題を見て「√(ルート)が2つ以上出てくる」または「sinθ・cosθが登場する」場合は、後回しにして他の問題を先に解いてください。そういった問題が2〜3問あっても、残り7〜8問で確実に点を積み上げれば合格圏には十分届きます。
練習の進め方——典型問題を繰り返すだけで十分
計算問題の学習で最も効率的なのは「理解してから解く」のではなく、「解いてから覚える」アプローチです。まず5パターンの解法手順を1回覚え、あとは過去問を繰り返し解くだけで定着します。
週別の練習スケジュール(計算問題分)
第1週:公式の写経と例題3問
5パターンの公式をノートに書き写し、各パターン1問ずつ例題を解く。答えを見ながらでよいので、「手順の流れ」を体に染み込ませることを目的にする。
第2〜3週:過去問を分野別に20〜30問
基礎理論・配電理論を分野別フィルタで絞り込み、年度ランダムで解く。間違えた問題はパターン番号(1〜5のどれか)を書いてマーキングし、弱いパターンを把握する。
第4週以降:弱いパターンの問題を集中演習
マーキングした問題を繰り返す。同じ問題を3回連続で正解できたら卒業。5パターン全てで卒業できれば、基礎理論・配電理論の6〜7問は安定して取れるようになる。
資格クエストでは基礎理論131問・配電理論130問を分野別に演習できます。間違えた問題だけを繰り返す機能を使うと、弱点に集中した効率的な練習ができます。3ヶ月の学習計画は第二種電気工事士3ヶ月独学ロードマップも参考にしてください。
まとめ
電気理論分野を「計算が苦手」という理由で全捨てするのは、合格への最短ルートではありません。データから見えた結論をまとめます。
- 基礎理論131問(10.1%)+配電理論130問(10%)=合計261問(約20%)——全捨てすると残り40問で75%の正答率が必要になる
- 必修5パターン(オームの法則・合成抵抗・電力計算・電圧降下・抵抗率)——この5つだけで6〜7問を確保できる
- 交流回路・力率・三相交流の複雑な計算は後回しでよい——√が2つ以上・三角関数が出てきたら飛ばす
- 「解いてから覚える」で十分——公式を写経して過去問を繰り返すだけで定着する
計算問題を6〜7問確保すると、配線図・写真鑑別・施工方法・法規などの他分野への負担が大きく減ります。試験の全体像を把握したい方は第二種電気工事士 完全攻略ガイドもあわせてご覧ください。
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